学者がビジネス・スクールの思考法を技術教育に持ち込んだ理由

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 100の空席に対して48人しか有資格候補者がいないという米国のサイバーセキュリティ人材不足は業界全体でよく知られた問題だ。ライアソン大学サイバーセキュリティ研究所の初代所長であるアテフェ・マシャタン博士は、ライアソン大学のような機関におけるサイバーセキュリティ課程の拡充により、間もなくこの人材不足を埋める一助となる有資格技術者が輩出されるだろうと考えている。

 次世代のサイバーセキュリティの専門家はこれらの役割に必要な技術的スキルを得ているだろうが、教室から会議室へ一足飛びに移るために必要となるビジネス感覚を全ての人材が持っているわけではない。マシャタン博士がライアンソン大学のテッド・ロジャース・マネジメント・スクールで構築している教育課程は、リップルのUBRI(大学ブロックチェーン研究イニシアチブ)の支援を受け、学生に上述の重要な文脈を提供することを目的としている。

 マシャタン博士はこう説明する。「業界はサイバーセキュリティが置かれているビジネスの文脈を本当に理解しているサイバーセキュリティの専門家を必要としています」博士はライアソン大学情報技術マネジメント学科の教授でもある。

 「計算機科学科や工学科の技術者と(中略)ビジネス・スクール出身の経営者は(中略)通常2つに分かれています。私はこれらを一緒にできないかと考えました。(現在)私は情報システムセキュリティおよびプライバシーと、企業情報セキュリティとを同時に教えており、サイバーセキュリティで技術的および経営的に最良の分野を融合させたサイバーセキュリティおよび情報アシュアランスの学際的修士課程を構築しています」

 技術とビジネスの専門知識を組み合わせることの重要性に対するマシャタン博士の認識は自身の経歴に由来している。ウォータールー大学で暗号学の博士号を取得し、名門EPFL(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)でポストドクター研究を行った後、博士は12年に学界を離れ、あるグローバル銀行の情報セキュリティ上級顧問に就任した。

 暗号学は企業セキュリティの一要素でしかないことを理解したマシャタン博士はより広いサイバーセキュリティの世界に没頭し、同時に金融機関が何を必要としているのかについてより広い理解を得ていった。16年にライアソン大学に招かれ学界に戻った博士は、学生には現実世界のビジネス問題を解決する経験を積ませようと決意した。

 博士が注目している重要分野のひとつがブロックチェーン技術とそのビジネスにおける潜在的好機だ。研究所内の博士のチームは、企業が技術を自分たちに適しているかどうか評価する助けとなるブロックチェーン導入フレームワークを開発した。他にも、チームは様々な産業でブロックチェーンを導入する際の原動力と障害を分析している。そのひとつが不動産業だ。

 「(私たちは)不動産市場での不正行為を減らすためにブロックチェーン技術を利用しています」とマシャタン博士は語る。「eSURe(公正統一スマート不動産)と呼んでいる研究開発プロジェクトは(中略)企業間のワークフローを分散化することでコストと不正の機会を減らしています。私たちは現在、ID、決済過程、モバイルデジタルウォレットをこのシステムに統合するための取り組みを進めています」とりわけ、研究所は決済過程の構成要素に対応するためeSUReのモバイルデジタルウォレットにデジタル資産XRP(XRP)の決済機能を追加する途上にある。

 このプロジェクトが生まれた一因は、マシャタン博士自身が住宅を購入する中で不正の被害に遭いかけた経験に由来している。しかしながら、プロセス全体の透明性を高めるためにブロックチェーンを利用するという博士のアイデアは有力な不動産業者から前向きな反応が得られなかった。マシャタン博士は、不透明なプロセスは購入者にとっては都合が悪いものの、ブローカーには都合が良いということを理解した。

 研究所のブロックチェーンプロジェクトに対する不動産業界の抵抗により資金調達が困難になったが、そこでUBRIが介入した。現在、研究所とUBRIのパートナーシップにより、マシャタン博士のチームは企業が取り組もうとしない、あるいは取り組めない現実世界の別の課題に挑めるようになった。その一例が、現在の暗号標準に量子コンピュータがもたらし得る将来の脅威だ。

 「暗号化された金融情報や診断記録は今でも収集可能です(中略)攻撃者は情報を抑えておき、それを破るためのより洗練されたツールの登場を待つことが出来ます。(組織は)量子の脅威と、それが自分たちにどのような影響を及ぼすのかと、暗号の俊敏性を支えるために今何が出来るのかを学ぶ必要があります」

 技術者は量子コンピュータを技術的観点から眺めるかもしれないし、ビジネス・スクールの卒業生はそれをSFの領域として片付けるかもしれない。しかしマシャタン博士の混合アプローチは、博士と学生が常に今日と明日の技術の潜在的メリットとリスクをより広いビジネスの文脈に位置づけることを可能にする。

(イメージ写真提供:123RF)

https://ripple.com/insights/why-this-academic-brings-a-business-school-mindset-to-her-technology-programs/

This story originally appeared on Ripple Insights.

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