活況戻る中国の仮想通貨取引所

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始まりは2017年1月だった。中国人民銀行(中銀)の上海と北京本部の職員が、同国最大手仮想通貨取引所の事業拠点数ヵ所に立ち入り検査を行い、執行役員を審問した。

両本部職員は当時、検査の目的は、取引所が反マネーロンダリング令および資本規制を順守していることを確認することだと説明した。

しかし、フオビ(Huobi)のCOO(最高執行責任者)であるロビン・ヂュー(Robin Zhu)氏によると、1月の立ち入り検査には別の目的が隠されていた。

同氏は「当局は、中国における仮想通貨取引の過熱ぶりの全体像を把握したかったのです。そのために、ビットコインの機能、資金の源泉と流通内容、さらに仮想通貨取引の損益構造を調査しました」と言う。

さらに中銀は、取引所の取引高や市場参加者数に関する情報の開示も要求した。検査以前から、フオビは、中銀による仮想通貨業界の把握を支援する目的で、取引場のデータに加え各国政府の政策に関する情報を定期的に提供していた。

ヂュー氏は何かが起きていることを確信した。同氏は、仮想通貨業界を規制する枠組みを構築するために、中銀は情報を収集していると察していた。そして、それが目的ならば、多くの取引所はあまり懸念する必要はないと思っていた。

ところが9月に入ると、中銀はICO(イニシャル・コイン・オファリング)、さらに国内での人民元を使う仮想通貨の注文簿取引の禁止を発令したのだ。

これにより、1月に行われた検査は本格的な取り締まりへの下準備だったという見方が広がり、国内の仮想通貨市場が大きく動揺した。

フオビの創設者でありCEO(最高経営責任者)のレオ・リー(Leo Li)氏は、前回のコインデスクとのインタビューで、こうした当局の動きに市場が動揺していることは市場での取引高が裏付けていると答えている。例えば、2017年11月1日の取引高は、注文簿取引が禁止される直前の9月15日分のわずか5%に縮小している。

もっとも、こうした逆風をよそに、フオビなどの取引所は、新たな事業の成長手法を見いだして発展し続けている。

ヂュー氏はコインデスクとのインタビューで、


「当局がどのような規制が実施しても、われわれは順守することを誓います。しかし(ビットコインの)勢いを止めることはできませんよ」と強気姿勢は変わらない。

東西への拡大

実際のところ、当時中国の仮想取引所の双璧であったフオビとオーケーコイン(OKCoin)は、取引量ですでに世界のトップ10グループ内に返り咲いている(現在、それぞれの取引プラットフォームであるHuobi ProとOKExは仮想通貨のみを取引している)。

さらにフオビ・グループは、9月以降で従業員を倍増し400人を超える体制となり、「当局の規制強化へ適正に対応する姿勢を明示している」(ヂュー氏、コインデスクとのインタビュー)。

「店頭取引への移行は想定外の事業展開です。こうした展開を事業戦略に組み入れることは想定しませんでした」(同氏)

ただし、規制の一部が緩和されるまでは積極的な拡大成長計画を継続する方針で、足元の数カ月間に、香港、シンガポール、韓国、米国に事業所を開設している。

また、日本のSBIグループと韓国の某社との業務提携により、今年3月をメドに両国で取引所を開設する計画を進めている。同社がサンフランシスコに新設した事業所は、ブロックチェーン関連の研究や新興企業の育成に注力しているが、ここへきてコンプライアンス専門家も採用している。これは、仮想通貨サービスで米国進出を図った動きと考えることができる。

この点に関してヂュー氏は、「米国の法規制体制を完全に把握した後に続く新局面の一つの施策として、取引所の開設カードは残します」と答えている。

フオビは長期戦略の一環として海外での事業拡大を進めてきた(同氏)が、中銀の規制実施を受けて同社の海外戦略を加速させたことは間違いない。

全体としてみれば、海外戦略は同社にプラス効果をもたらし、顧客層の多様化進展に寄与している(ヂュー氏)。  例えば、Huobi Proは現在300万人のユーザーを持つが、うち中国本土のユーザー数の割合は50%を割っている。

ユーザーロイヤルティ、収益、そしてトークン

フオビは、既存ユーザーへのサービス強化にも継続的に力を入れている。

この取り組みでは、自社トークン「HT」の発行にも踏み切った。HTはイーサリアムのブロックチェーン技術を使って管理されるトークンで、ユーザーロイヤルティを創造する効果(さらに増収効果も)が期待できる。

多くの新興企業はICO手法(トークン購入意欲を持つ投資家に販売する)を採用するが、当社の場合は、自社の取引プラットフォームで利用できる前払い型サービス料金パッケージを購入したユーザーに、トークンを無償で提供することにした。

この仕組みは大成功し、HTトークン発行の公表後14日間で、投資家は前払いサービス料金の購入に殺到し、同社は3億ドルもの資金を発行前に調達できた。

さらに、HTトークン発行に続き、「HADAX」と称した新取引所の開設も発表した。この取引所は、HTトークンを持つ投資家が、取引所プラットフォームでの取引を希望する仮想通貨を投票できるシステムを持つ。

「非常の多くの仮想通貨が新規に発行されているので、すべての仮想通貨を評価することは不可能です。HADAXは、投資家が取引する価値があると考えるトークンを選択できる仕組みを提供しているのです」とヂュー氏は説明する。

フオビのデータによると、2月24日現在で、HADAXプラットフォームには850万HTを持つ10万4,308人のユーザーが、75種類の仮想通貨に合計8,500万票を投じている。

この結果について、ヂュー氏は、


「長期的な観点では、法定通貨を使う仮想通貨取引より、仮想通貨同士の取引の方が有望だと見ています。これは、仮想通貨同士の取引は多くの選択肢があるためです」とコメントする。

バイナンスの台頭

中銀の規制は単に障害となっただけではない。規制の実施が、中国と密接なつながりを持つ新たな仮想通貨取引所の開設を促進させたとも言える。

中銀による規制が発令された2カ月前の2017年7月には、オーケーコインの前最高幹部だったジャオ・チャンポン(Zhao Changpeng)とホー・イー(He Yi)の両氏がバイナンス(Binance)を設立した。設立発表にあたり、同取引所は、開設資金を中国のベンチャー資金企業の2社(BlackholeとFuncity)から受けたことも発表した。

拠点を中国本土外に築いた同取引所は、時期と場所に恵まれていたと言える。ヂュー氏によると、当時の国内市場には強い先行き不透明感が立ち込めており、これを嫌った同国投資家は、仮想通貨資産を海外のプラットフォームに送金し始めていた。

ヂュー氏の言葉を借りれば、

「バイナンスの設立は絶好のタイミングだった」

コインマーケットキャップのデータを見ると、バイナンスは直近24時間で20億ドルの取引を成立させている。設立半年の間に世界で有数の仮想通貨取引所に成長したことになる。

「(バイナンス 発足当時)フオビはすでにHuobi Proでの取引を開始していましたが、取り扱いトークン数でバイナンスに劣っていました。ちなみに、現在のHuobi Proは1日に10億ドル以上のトークン取引が成立しています」(同氏)

バイナンスは、前もって中国国内からのアクセスを制限すると発表していた。それでも「インターネット上を科学的に動けばアクセスは可能」(同氏)、つまり、VPN(仮想私設ネットワーク)を使ってIPアドレスを隠せばアクセスできるのである。

ヂュー氏は続ける。


「取引所に保有している資産に通常の方法を使うアクセスが制限された場合、誰でも必死に知恵を絞ってアクセスする手段を考えるでしょう」

https://www.coindesk.com/chinas-crypto-exchanges-didnt-just-survive-theyre-thriving

This story originally appeared on CoinDesk, the global leader in blockchain technology news and publisher of the Bitcoin Price Index.